一般的に「形から入る」という言葉は、あまり良いニュアンスで使われません。

しかし、僕は形から入ることは良いことだと思っています。それが結果的に安全性や効率化、マナーの向上に結びつくことが往々にしてあるからです。

登山用品なんか特にそうです。ピンからキリまでありますが、品質の良いものはそれなりの値段がします。もちろん例外もありますが、経験上、良いものは相応の値段がします。

よく初心者にありがちなことですが、「安いからこれでいいや」という考えを持つことは非常に危険なことだと思っています。というのも、登山というのは、他のスポーツと比べて、一つの失態や準備不足が、重大な事故や死に直結しやすいスポーツだからです。一定の経験を経て、持ちうる知識を駆使した上での「これでいいや」ならまだしも、これからその世界に足を踏み入れようとする段階で、単に安いという理由だけでモノを選ぶのは、個人的にはあまり良いことだとは思わないのです。

誤解を招かないように言うなら、安いモノでも品質が良いものはもちろんたくさんありますので、適当な気持ちで選ばず、きちんと見定めた上で購入することが必要だと思います。そういう意味でも、形から入ることはある程度大切なことだと思うのです。(もちろんその道具を適切に使える知識があることを前提として)

あとは、ランニングもそうです。ワゴンで安売りされているシューズを「これでいいか」という気持ちで買うのか。それとも、自分の足型をきちんと計測してもらい(だいたい無料で測ってもらえます)、その上でシューズを買うのか。その二つでは、だいぶ違うと思います。適当な気持ちで選んだシューズで走ってみて「なんか足が痛い」「膝が痛い」といった問題が生じ、ランニングから離れてしまう人も実際には多い。きちんとしたランニングシューズは、クッション性はもちろん反発性や安定性もありますので、怪我のリスクを下げ、快適なランニングをサポートしてくれます。そういう意味でも、良い道具は、そのスポーツの楽しさや本質を教えてくれると僕は思います。

それに、軽い気持ちで選んだシューズと、きちんと自分に合ったシューズで走るのとでは「マインド」が違います。道具を軽い気持ちで選ぶという姿勢というのは、必ずそのスポーツに対する取り組み方にも現れます。

これって、どんなスポーツや趣味でもそうだと思います。きちんと選んだ商品というのは、愛着も湧きますから、そうでないものよりも大切にします。駅前に止まっているサビだらけのチャリと、高いお金を払って購入したであろうスポーツタイプの自転車の違いみたいなものです。後者には愛着が湧きますから、ちゃんと本を買ってきてメンテナンスの方法を自分で学習し、ルールやマナーも学ぶんですよね。そういうのを「面倒臭い」「難しそうだからいいや」で終わらせてしまう人もいますから、結局はそういうとこなんだと思います。

僕は街中でよく人間観察をしてるから分かるんですが、きちんと身なりを整えて、ロードバイクに乗っている人が信号無視をする確率って、ゼロではありませんが本当に低いんです。基本的にはマナーがいい(もちろん例外があるのは重々承知しています)。

逆に、そうじゃない人ほど、逆走したり、イヤホンを付けながら走っていたり、スマホを片手に走っていたり、そういう人が本当に多い。きちんとその世界に身を置いている人って「自分の迷惑が、業界全体の印象の悪化につながる」という意識が少なからずあるので、他人に迷惑がかかることを避けるんですよね。登山でゴミを捨てる人も「普段登山をしていない人」なので、きちんと真剣に山に向き合っている人は、そういうことはしません。自分で出したゴミはきちんと家まで持ち帰ります。

一概には言えませんが、形から入るということは、そのスポーツや趣味に本気で取り組むという「決意表明」だと僕は考えています。

浅野